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10.殉愛[JYUN-AI]

 この手紙は誰あての手紙でもありません

 だからこの手紙は誰にも読まれたくないです

 もし誰かが見つけて読んでいるとしたら、やめてください

 やめましたね??

 レナもダメだよ?? はずかしいから、よまないでね♪



 ず~~~っと、わたしとレナは愛しあっていました

 世界で一番愛しあってたとおもうくらいです

 毎日きらきらしてて、好きな人がいるってステキなことだな~~って思って

 幸せな人生でした♪


 だから、この島に来てしまったことは本当に悲しいです

 おかしい島です コロシアイなんて絶対したくないのに、コロシアイをしろとイナバさんは言います

 そんなことってありますか

 そんなバカなことゆるせますか

 わたしはイヤです 絶対イヤです


 だから、こわくて逃げました

 走り回りました 逃げ回りました

 死にたくないです 殺されたくないです

 レナが心配です 事ム所のみんなが心配です

 逃げて、逃げて、逃げ回りました

 でも、そんなおかしい島でもレナは、わたしを見つけてくれました

 私たちは二人で逃げて、一緒にいられるところを探して


 そして、やっとこの洞くつにたどりつきました

 それは二人きりの時間で、わたしたちのサイコーの場所です

 それで、二人だけの洞くつで、レナと私は幸せなえっちをしました♡ ダイスキ


 レナへ

 わたしのこと 守ってくれるっていってくれてありがとう

 わたしのこと 愛してるって言ってくれてありがとう

 誰かに殺されるなら、レナがいいです

 レナになら、殺してもらいたいです

 レナとなら、いっしょに死にたいです



 相談したらレナ、良いよって言ってくれました

 だから、わたしこれからレナに殺されます

 でも、もしかすると、レナはわたしを殺したあとに怖くて死ねないかも…

 そうだとしても、わたしは気にしないからね

 それがレナのえらんだ道だったら自分をせめないで欲しいな



 でも、できればいっしょに天国にいこうね

 天国だったら、わたしたちきっとケッコンできるよね??

 愛してるよレナ 大好きだよ



 わたしはきっと、この島でいちばん幸せな女の子です

 神様、ありがとう


               シーサイドサンセット 小早川鴇







     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇







 丸められた皺だらけの出場者名簿の裏に、震えた丸文字で遺書のような手紙が書き込まれていた。
 ところどころ濡れてインクが滲んでいるのは、きっと涙の痕跡だろう。その手紙から、死を覚悟した少女が、震える手で涙を流しながら、誰宛でも無い手紙を書いている光景、そして、それを見つけた少女が泣きながら手紙を読む光景が容易に想像できた。
 E-6地区、火山のふもと。その禿山の横穴へ迷い込んだ血華美人は愛の華の音無翔太郎は、そこに転がる二つの死体を眺めていた。一つは、手を組んで仰向けになっている小柄な女性。そしてもう一人、長い金髪を垂らして俯いて体育座りになっている大柄の女性。
 二人とも、その命を、終えていた。
 見知った顔だ。小さな死体はシーサイドサンセットの小早川鴇、大きな死体はシーサイドサンセットの大槻玲奈だ。

 心中。
 その二文字が脳裏を過ぎる。トキの手記によれば、トキはレナに自らの殺人を依頼し、そして、レナの自殺も依頼した。
 手紙は、レナが左手に握り締めていたものだ。そして、彼女の反対側の手に握られていた物は、手のひらに収まる程度の古ぼけた小さな拳銃―FN ポケット・モデル M1906―だった。……この拳銃でトキの命を終わらせ、そして自分の命を終わらせたのだ。
 合意の元、殺し、殺され。そして、自決した。

 この島で生きることを、諦めた。

 来世に、新天地を求めて、命を、絶った。

「う゛うッ!?」

 ふいに沸き起こる嘔吐しそうになる感情を、口を抑えて封じ込める。駄目だ、吐いちゃ、駄目だ。思わず口元を押さえたまま駆け出して、横穴から出る。そして、跪いて、声を殺して、泣いた。……この二人の世界を、汚してはいけない。

 なんて、なんて非道い、しま。誰が、こんな島を作った。
 一体誰が、こんな最低なゲームを考えたんだ。

 二人は愛し合っていた。この際性別がどうとかは関係ない。
 二人で完結出来るような、幸せな二枚貝だったのだ。
 それなのに、貝殻はお互いを見つけ……あろう事か、死を共にした。

 相方を殺し、そして、自らも、逝った。

 どうしてそんな事をしなくちゃいけないんだ。
 二人が何をした。二人の何がいけなかったんだ。
 誰に迷惑をかけたわけじゃない。

 二人で、良かったのだ。それだけで良かったんだ。

 それなのに、どうして、最愛の相手に出会えたのに。
 明日のデートの予定もあったのかもしれないのに。……死を選ばなければいけない?

 ……許せない!
 翔太郎は立ち上がった。こんな事許しちゃいけない。こんな馬鹿げたゲームを考え、実行し、巻き込んだ。そいつをこの握りこぶしで殴りつけてやらないと気がすまない。具体的には否幡さんだ。それか、いるのなら、黒幕、協力者。……否幡さん、とにかく全員をやっつけなければ気がすまない。

 そして、そのためにはこの狂った島から脱出しなければなるまい。

 ……だが、今の翔太郎は、余りにも無力だった。 
 彼の配布された武器は「こけし」。東北地方の伝統工芸品だ。こんな物を武器に、この島を戦い抜く事など到底不可能なこと。

 翔太郎はすっくと立ち上がると、再度洞窟へと足を踏み入れる。転がる二つの死体。
 レナの傍にしゃがみこむ。そして、彼女の硬直した冷たい指を、ぴきぴきと剥がしていき、レナの手から、持っている拳銃を取った。小さな拳銃、しかし、相手を脅す事には適しているだろう。続けて、トキのデイバッグの中を漁る。……武器らしき物は、ガラスの灰皿しかなかった。ハズレ武器。仕方がないので、幾つかの食べ物だけを拝借して、自分のデイバッグの中へと詰め込んで行く。

 ……そうして、レナの腰に手を回し、抱き上げた。
 大柄な身体。長い金色に染めた髪の毛。黒縁メガネ。正直、顔はかなり整っている方だとは思うが、そのこめかみに空いた穴と頬に付着している赤黒い血漿が、彼女の全てを物語っていた。
 その身体を、小さな死体の傍へ、横たえる。
 そして、ぎしぎしと軋む硬直した彼女の腕を動かしながら、丁寧に腕を組ませた。

 トキの遺書は、レナのポケットの中へ。
 読まれたくないなんて書いてあったけれど、この遺書は、ラブレターだったから。

 トキがレナに宛てた恋文だったから、レナが持っていくべきだ。

 二人だけの世界。
 二人きりの空間。

 二人分の棺。

 翔太郎は踵を返して洞窟を後にする。

 固く誓う。
 もう二度と繰り返さない。こんな事、絶対にもう見たくない。

 山石キヨミ、桜浦みるく。
 二人の相方を思い出す。

 救い出す。
 二人と合流して、この島から脱出する。

 さあ、歩こう。

 口を固く結んだまま、翔太郎は二人きりの世界を後にした。





【40.シーサイドサンセット トキ(小早川鴇) 死亡】
【41.シーサイドサンセット レナ(大槻玲奈) 死亡】





【E-6/一日目 深夜】

【血華美人は愛の華/音無翔太郎】
【装備:FN ポケット・モデル M1906】
【所持品:基本支給品一式、こけし】
【状態:普通】
基本方針:二人の相方と合流し、この島から脱出する。
1:このふざけたゲームを始めた奴に、一発入れてやる。
























     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





 ずるい。

 なんて、ずるい。

 この二人は、なんて、ずるい!!

 ずるい! ずるい! ずるすぎる!!



 その二つの死体は、完璧だった。完璧にしか、見えなかった。
 洞窟の中で、二人で完結して、安らかな顔で、寄り添って、彫刻のように、愛し合って、望み合って、結合して、夢を見て、触れて、障って、溶かして、解かして、語り合って、騙り合って、受け入れて、請け負って。

 死に合った。

 ……悔しさから、歯噛みする。
 自分に出来ない事を先にやられてしまった。
 私が一番やりたかったことだ。
 私が今すぐやりたいことだ。

 そうして……この二人は、完璧な終末を手に入れた。
 二人きりの最期の場所を手に入れた。

 嗚呼なんて、幸せなんだ、こいつらは……!!

 地団駄を踏みたくなる気持ちを、全力で抑える。


 ハーベストムーン、久我愛依ことアイは、じっと二人の死体を見下ろした。
 右手に持つのは、湾曲した剣―カットラス―。

 ユウを探す。
 ユウと一緒に死ぬ。

 それが、私の望みで、ユウの望みの、はずだ。


 さあ、歩こう。

 口を固く結んだまま、アイは二人きりの世界を後にした。






【ハーベストムーン/久我愛依(アイ)】
【装備:カットラス】
【所持品:基本支給品一式、不明支給品0~1】
【状態:狂愛】
基本方針:ユウと合流し、心中する。

【現在 60名】
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